「給湯器からブオーンという音がしているけれど、お湯は出るから大丈夫だろう」と考えるのは、非常に危険な判断です。長年、現場で数多くの給湯器修理を手がけてきた技術者に話を聞くと、異音は故障の最終宣告であることが多いといいます。特に「ブオーン」という重低音は、燃焼用ファンモーターの不具合であることが大半ですが、これを放置することには二つの大きなリスクが伴います。一つは、給湯器の完全な停止です。ファンモーターは燃焼に必要な酸素を送り込む心臓部ですから、ここが完全に動かなくなれば給湯器は点火すらできなくなります。困ったことに、こうした故障は負荷のかかりやすい真冬の寒い日に限って発生する傾向があります。給湯器の在庫が不足している時期であれば、新しい製品に交換するまで数日間もお風呂に入れない生活を強いられることになります。もう一つの、より深刻なリスクは不完全燃焼です。ファンモーターの回転が不安定になると、バーナーに供給される空気の量が不足し、ガスの燃焼が不完全になります。不完全燃焼が起こると、無色無臭で毒性の強い一酸化炭素が発生し、給湯器の排気口から屋外へ排出されます。近隣の住宅との距離が近い場合や、窓の近くに給湯器がある場合は、知らぬ間に室内に一酸化炭素が入り込み、重大な中毒事故を引き起こす可能性も否定できません。プロの視点では、異音がし始めた時点で部品の摩耗は相当進んでおり、すでに燃焼効率が悪化してガス代が余計にかかっていることも多いと指摘します。修理現場では、異音の原因が単なる埃の詰まりであることもあれば、内部の基板が熱で焼けてしまっていることもあります。特に「ブオーン」という音が、給湯器の運転を停止した後もしばらく続く場合は、冷却ファンが過剰に働いている証拠であり、内部が異常な高温になっている恐れがあります。技術者は異口同音に言います。「音は機械が発する最も分かりやすい悲鳴です」と。まだお湯が出るからと過信せず、音が気になり始めたらすぐに点検を依頼することが、修理費用を抑え、かつ家族の安全を守るための唯一の道です。最新の給湯器は省エネ性能も向上しており、古い機種を無理に使い続けるよりも、交換した方が結果的に光熱費の削減につながるケースも多々あります。異音を放置せず、まずはプロの診断を受けて、現在の給湯器がどのような状態にあるのかを客観的に把握することから始めてください。