現場で長年、数え切れないほどの浸水現場に立ち会ってきた経験から言えるのは、「排水管の水漏れを甘く見ている人があまりにも多い」ということです。蛇口からの水漏れであれば、ポタポタという音で異変に気づき、バケツで受けるなどの応急処置も容易ですが、排水管の場合はそうはいきません。排水管から漏れるのは、単なる水ではなく、食べカスや油、雑菌を大量に含んだ汚水だからです。この汚水が一度壁や床の内部に浸透してしまうと、乾燥させるのは極めて困難です。放置された湿気は瞬く間にカビを増殖させ、家族にアレルギーや喘息などの健康被害をもたらす原因となります。さらに恐ろしいのは、木造住宅におけるシロアリの誘発です。シロアリは湿った木材を好み、排水管の水漏れによって常に湿っている土台や柱は、彼らにとって絶好の餌場となります。気づいた時には住宅の骨組みがスカスカになっていた、という事例は決して珍しい話ではありません。また、電気系統への影響も無視できません。排水管の近くを通っている配線に水がかかれば、漏電による火災を引き起こすリスクさえあります。修理に伺った際、「お湯を使う時だけ少し漏れる程度だから、半年くらい騙し騙し使っていた」とおっしゃるお客様がいますが、その半年間で建物が受けたダメージを修復するには、本来の配管修理費用の十倍以上のコストがかかることを知っていただきたいのです。排水管の水漏れは、時間が解決してくれることは絶対にありません。むしろ、漏れた水が通り道を作ることで、穴や亀裂は確実に広がっていきます。「まだ大丈夫」という根拠のない自信は捨て、ほんの少しの異変、例えば床のわずかな沈みや、特定の場所だけで発生する不快な羽虫の発生などを、排水管からの警告として真摯に受け止めるべきです。私たちプロの仕事は、単に穴を塞ぐことではなく、その家の安全な暮らしを再生することです。手遅れになる前に専門家の診断を仰ぐことが、結果として最も安く、最も安全に大切な我が家を守る手段であることを、一人でも多くの方に理解していただきたいと願っています。
水道修理のプロが警鐘を鳴らす排水管の水漏れを放置するリスク