築三十年を超える古いマンションにおいて、最も懸念されるインフラトラブルの一つが、目に見えない場所で進行する水道管の腐食と、それに伴う接合部からの漏水です。ある事例では、ある日の夜、三階に住む住人から「天井から水が垂れてきている」という連絡が管理会社に入りました。調査の結果、真上の四階の部屋のキッチン奥にある給水管のつなぎ目が原因であることが判明しました。このマンションでは建設当時に鋼管が使用されており、長年の使用によってつなぎ目のネジ部分が内部から錆びて薄くなり、ある日突然、水圧に耐えきれず破断したのです。集合住宅における漏水事故が恐ろしいのは、加害側となった住人が全く気づかないうちに被害が拡大する点にあります。今回のケースでも、四階の住人はキッチン下をほとんど開けることがなく、壁の中で発生した漏水は床下に浸透し、階下の天井へと伝わっていきました。水道管のつなぎ目、特に異なる材質の管を接続している箇所では「電食」と呼ばれる腐食現象が起きやすく、定期的な点検が行われていないとこうした事故を防ぐことは困難です。この事故では、最終的に階下の家財道具や内装のリフォーム費用として数百万円の損害賠償が発生しましたが、幸いなことにマンションの共用保険や個人賠償責任保険が適用されました。しかし、金銭的な解決はできても、近隣住民との関係修復には長い時間がかかりました。水道管の接合部は、物理的な寿命がある消耗品であるという認識を全住民が持つ必要があります。最近では、老朽化したマンション全体で配管の更生工事や、錆びない樹脂管への更新工事が行われるようになっていますが、それでも各戸の専有部分にある枝管のつなぎ目までは管理が行き届かないことが少なくありません。この事例は、古い建物に住む以上、水道のつなぎ目という微細な箇所が、時に人生を左右するほどの大きな事故の火種になり得ることを痛烈に示しています。自分たちが使っている水の通り道がどのような状態にあるのか、一度立ち止まって確認することの重要性を、この漏水事故は物語っています。